JAXAウェブサイト > 宇宙利用推進本部Web > 準天頂衛星システム > 06 生活に欠かせないGPS
私たちが一番身近に利用できる宇宙がGPSではないでしょうか。簡単で便利に利用できるので、その実体と偉大さはあまり知られていません。GPSは大変優秀なシステムで、私たちの生活に浸透するまでには、長くたゆまない挑戦の歴史がありました。 現在もGPSは発展し続け、日本の第一世代の衛星測位システムにも不可欠な存在です。
   
   

GPSとは、Global Positioning Systemの略で「全世界的測位システム」や「全地球測位システム」と訳されています。GPSは、米国国防総省(DoD:Department of Defense)により、1970年代から打ち上げられ、衛星からの信号を受信できる機器さえあれば、世界中のどこでもその位置を測定できるシステムです。民生用信号(*1)は受信機さえあれば、誰でも無条件で使うことができ、測地や測量だけでなくさまざまな分野で利用されるようになりました。
一番身近な活用例としては、カーナビや携帯電話でも利用できるパーソナルナビなどがすぐに思い浮かぶと思いますが、それだけではなく、GPSを利用した地殻変動の観測、津波警報システム、粗大ごみの不法投棄監視など、測位とは無関係と思われるような場面でも私たちの生活をサポートしてくれています。

 

   
 <GPSのいろいろな活用例>
 ・ 地殻変動の測定、地震・火山予測 ・ ゴミの不法投棄監視
 ・ 荷物の位置情報管理 ・ バスやタクシーの運行情報サービス
 ・ 子供や高齢者の位置情報サービス ・ 津波監視
 ・ 犯罪・盗難防止 ・ 天気予報
 ・ 地図の作成 ・ 農作物の監視
 ・ 道路工事 ・ 貨物の積み降ろし
   

*1: 民生用信号=GPSの信号には、「民生用」と「軍事用」の信号があり、一般的に利用できるのは、「民生用信号」になります。

   
     
   
   
   
   

GPSは、衛星の軌道傾斜角が55度、6軌道面に各4機+軌道上予備機6機の計30機で構成されています(2008年1月現在)。米国のGPSW(Global Positioning Systems Wing)という組織により、衛星の整備・運用が行われています。
GPS衛星の型式はBlock I、II、Block IIA、Block IIR、Block IIR-Mと時代と共に新しくなり、2009年にはBlock IIF型が打上げられる予定です。

現在、一般に利用されているGPSの信号(L1(*2))は、強い電波やノイズによる影響を受けやすいなど、いろいろな弱点を持っています。また、米国でもGPSの弱点を克服し、現在の利用のニーズに合せて近代化させようという計画、「GPS近代化計画」が進められています。
GPS近代化が進むと、L1、L2信号に加えて、"L5"という新しい信号も利用できるようになり、例えばL1信号が何らかの影響で利用できなかった場合、L2もしくは、L5の信号を利用してより確実に測位を行うことができるようになります。


   
GPSと準天頂衛星の信号

GPS信号
現GPS
(Block IIRまで)
GPS近代化
(Block IIR-M)
GPS近代化
(Block-IIF)
次世代GPS
(GPS-III)
QZSS
民生用
軍事用
民生用
軍事用
民生用
軍事用
民生用
軍事用
民生用
L1



L1C◎


L1C◎
L2
L2C○

L2C○

L2C○

L2C○
L5
(LEX)

○:全てのGPS(もしくは一部のGPS)から現在送信されている測位信号
◎:今後新たに追加される信号

   

 

GPS近代化計画に基づき、現在のL1、L2に加え、L5からも民生用の新しい信号を送信していく予定です。Block IIR-M型は、これまで軍事用の信号しか送信されていなかったL2帯に民生用のL2C信号を送信しており、Block IIF型は、3つ目の民生用信号であるL5信号を送信することが予定されています。
また、米国では今後30年を睨んだGPSの後継衛星であるGPS-IIIの配備計画について研究開発が進められており、2014年頃から打上げが開始される予定となっています。GPS-IIIでは、現L1信号に加えてL1Cといわれる新たなL1の民生用信号を送信する予定となっています。

*2: L1,L2,L5など=
GPSではLバンドという周波数帯が使われており、その中でもL1、L2、L5などと分類され、それぞれ同じLバンドでも波長の違う信号が使われています。現在は、L1とL2(一部の衛星)のみが利用可能です。


   
   
     
   
   

現在、カーナビやGPS機能付携帯などGPSを活用する便利なアプリケーションは、私たちの生活でとても身近になり、今やGPSは私たちの生活になくてはならないものになっています。

GPSは、当初、軍事利用目的で開発されたものでした。衛星を利用した測位は精度もよく、誰でも容易に利用できるので、一般に公開すれば非常に有効なものです。しかし、GPS運用開始当初、精度のよい信号は軍事用に制限され、民生用の信号はSA(Selective Availability)という規制によって故意に精度が落とされていました。SAとは、信号の中にある位置を計算するための時刻をわざと狂わし、意図的に位置情報の精度を劣化させるもので、その精度の劣化は約100mもありました。SAはクリントン大統領が定めた米国GPS政策に基づき、2000年5月に解除され、それを機に精度は大幅に向上しました。近頃米国は、GPS-IIIからSA機能を廃止するとの声明を発表しました。

GPSは「全世界的測位システム」という名のとおり、全地球的に測位を行うもので、日本に特化したものではありません。
日本は、米国に比べ「磁気緯度」が低いという地理的な特徴から、電離層の変動が大きく、その補正を行うのが難しい場所に位置しています。また、電離層は、時間によって激しく変動するので、その予測が難しいだけではなく、急激な受信レベルの変動、低下が原因で受信障害が起こってしまうこともあります。

現在、広く利用されているカーナビの多くも、GPSからの情報だけでなく、GPSの誤差を補正する補正信号や、地図とのマッチング、ジャイロ(*3)など、GPS情報以外の補正手段により、より正確な位置を計測、表示しています。
GPSの補正情報の多くは、地上の"基準点"という正確な位置が分かっている場所でGPS信号を受信し、どれだけその信号に誤差があるかを計算して作られ、それを補正情報としてFMの電波や光ビーコンなどで送信される方法があります。しかし、その補正情報を送る場合も、送信できる情報量が少なかったり、障害物によってさえぎられたりすることがあります。
将来、より精度の高い測位を追求するには、日本の地理条件に応じて、GPS信号をより正確に受信、補正する技術が必要とされています。

 

*3: ジャイロ=カーナビなどに使われる、回転する質量(コマ)の回転速度の変化から軸の傾き、角度変化を計測する機器

   
   
     
   
   

GPSがなかった頃、自分がどこにいるのか、行きたい場所がどれぐらい離れているのかを知ることは容易なことではありませんでした。1957年、ソ連(現:ロシア)が初の人工衛星「スプートニク1号」の打上げに成功し、ドップラー効果を利用した衛星の追跡手法の原理が確認され、衛星からの信号による"位置"の算出が実現可能なことが明らかとなりました。1960年代米国では、ドップラー方式を利用した衛星による測位(衛星航法)を確立するため、TRANSIT衛星が次々に打上げられ、NNSS(Navy Navigation Satellite System)と呼ばれる衛星測位システムが誕生しました。

その一方で、1949年米国海軍天文台でも最も正確に時間を刻むといわれている『原子時計』の開発に成功し、その後、1965年頃までにはセシウム原子やルビジウム原子による原子時計の開発も進み、正確な時刻はより精度・安定度の高いものになっていました。


1967年、これまでのドップラー方式を利用した測位とは違い、正確な時間(時計)を持つ衛星と地上とで通信を行い、その誤差により位置を算出できるTIMATION衛星が打上げられました。
1973年、米国防総省がGPSの開発を決定し、JPO(Joint Program Office)を設立しました。当初のGPSの利用目的は軍事利用でした。
1974年、TIMATION衛星の3番手としてNTS-1、また、1976年にはNTS-2が打上げられました。このNTS衛星は現在のGPSを構成するNAVSTAR衛星の前段階の実験衛星となりました。
1978年から、プロトタイプのNAVSTAR衛星(Block I)が10基打上げられ、テストが行われました。
1989年から、実際にGPSを構成するNAVSTAR衛星(Block II、Block IIA、Block IIR)が次々と打上げられ、1993年6月、24機目の衛星が打ち上がりGPSが完成しました。
1996年3月には、米国GPS政策によって『GPSを直接課金することなく全世界に開放する』ことが発表され、受信機さえあれば、誰でも自由にGPSの民生用信号を利用できるようになりました。ただし、この当時はまだGPSの利用の第一目的は軍事利用であったため、GPSの精度を意図的に劣化させるSA(Selective Availability)と呼ばれる処置が施されていました。


その後、カーナビゲーションなど私たちの生活の様々な場面で活用されるようになりました。
また、位置情報の誤差を補正する技術や受信機の性能もどんどん進歩していきました。
2000年5月、SAが開放され、GPSの精度は従来の10倍以上向上しました。

   
   
     
   




01 「準天頂衛星システム」とは?  02 「準天頂衛星システム計画」とは?  03 「高精度測位実験システム」とは?  04 準天頂衛星がもたらす未来
05 準天頂衛星+GPS=?  06 生活に欠かせないGPS  07 居場所を知る測位ってなに?
宇宙航空研究開発機構 宇宙利用推進本部 準天頂衛星システムプロジェクトチーム
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